The Arrival
(日本語では「到着」の意)
鉛筆で描いたような繊細で美しい絵に引き込まれました。最初から最後まで文字は一つもなく、コマを追っていく形になります。
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言葉はありませんが、映画を見ているように理解できます。 |
一つ一つの絵が、額に入れたくなるほどの完成度であることはもちろんですが、描かれているものの不思議感がたまりません。
お話はある男性が家族と別れて未知の世界に出かけるところからはじまります。題名が「The Arrival (到着)」とある理由は読んでみると分かると思います。
未知の世界だけあって、言葉も住んでいる生き物も食べ物も不可解なものばかり。戸惑う男性。なんとか仕事を見つけ、手探りながらも働き始めます。
暖かくて優しい、とても丁寧に描かれたお話です。
この本を「読み」終わったあと、ふと思いました。
「日本に来る移民の人たちもこんな思いをしてるのかも」
私たちには無意識に言葉として入ってくる日本語も、外国人にとってはぐにゃぐにゃした記号にすぎません。
食べ物も習慣も言葉もまったく違う場所に、家族と別れて1人で出稼ぎに来なければいけない人たちの不安といったら、どれほどのものでしょう。旅行や留学と違い、いやだったら帰るという選択肢もない場合、その覚悟や悲壮感は私たちには想像もつかないものだと思います。
本の中では、主人公と似たような境遇の他の移民たちが、どうやってこの未知の世界に来る羽目になったのかを説明する場面があります。恐ろしいことが起きて、自分の世界を逃げ出さざるを得なかった、と。まさに難民を彷彿とさせます。
文字のない絵本ですが、このタイプの本は最近 グラフィック・ノベル(絵小説)というジャンルに分類されています。買ってから知ったのですが、この本は出版以来世界各国29の賞を受賞しています。また、Amazon ベストセラー商品ランキング(2011年12月現在)もすばらしい成績でびっくりしました。
1位 ─ 洋書 > Comics & Graphic Novels > Children's Comics
1位 ─ 洋書 > Children's Books > Educational > Explore the World
1位 ─ 洋書 > Comics & Graphic Novels > Graphic Novels
この本を買った後、作者の Shaun Tan (ショーン・タン)という人について調べてみました。
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オーストラリア出身 |
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子ども時代 |
彼は見ての通りアジア系なのですが、オーストラリアで生まれ育っています。父親がオーストラリアへの移民で、彼は2世ということになります。子どもの頃から絵が上手かったので、背が一番低かったのを補うことができたと言っています。
国籍・年齢を問わずに楽しめる本だと思います。
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アライバル
The Arrival