The Black Book of Colors
The Black Book of Colors。直訳すると、「色についての黒い本」です。何のことかと思われそうですが、その名のとおり、すべてが漆黒の絵本です。
例によってワシントンDC のお気に入りの本屋さん Kramers で見つけて購入。絵本コーナーはそもそもカラフルなエリアなので、真っ黒な本は目を惹きます。
写真では分かりにくいかもしれませんが、黒いページの上にさらに黒いエンボスというのでしょうか、点字のような感じででこぼこと絵がついています。例えば「赤」のページはイチゴのぶつぶつを指で触って感じることができるようになっています(写真参照)。
色によって「ふわふわ」したものであったり、「きらきら」したものであったり、「つるつる」したものであったりします。あえて色を排除することで、目をつぶっていても、暗い部屋でも、色を感じることができるという仕組みです。なんという粋な本でしょう。
そういえば昔観た映画「マスク」で、目の見えない女の子に主人公が色を教えようとするシーンがありました。
「これが赤だよ」と熱々に暖めた小石を渡し、「これは青」と冷蔵庫で冷やした小石を渡します。「これは雲」とふわふわの綿を手に握らせたり。
特に生まれつき盲目で、色を見たことがなければ、色という概念自体が理解しえないものなのかもしれません。私たちが常識と思っているものがいかに普遍性でないものなのか、ついつい忘れそうになりますが。
本の冒頭に以下のような一文があります。
"It is very hard for a sighted person to imagine what it is like to be blind."
(目の見える人にとって、目の見えないということがどういうことかを想像するのはとても困難だ)
そして、この本は、"the experience of a person who can only see through his or her sense of touch, taste, smell or hearing"(触ったり、味わったり、嗅いだり、聞いたりすることでのみ「ものを見る」人の体験)がどんなものかを伝えるためのものだとあります。
文章もエンボスで、点字がついていますが、あるレビューによると本当の盲人が触れて理解のできる高さはないそうです。目の不自由な人のための本というわけでは(点字にかんしては)なく、目の見える人があえて触ることで「ものを見る」体験をするための本なのかもしれません。
物事には常に違う側面があるということを思わせられる一冊でした。
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